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『ちいさなメリーゴーランド』

『ちいさなメリーゴーランド』

(マーシャ・ブラウン:作 こみやゆう:訳 瑞雲舎)
32p オールカラー 本体価格 1400円

2015年6月15日 発売しました。


『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)や、
『ちいさなヒッポ』(偕成社)などの優れた作品で
日本の子どもたちにも、
長く愛され続けてきた絵本作家マーシャ・ブラウン。

彼女の1946年デビュー作を
こみやゆうさんの新訳でお届けします。


ニューヨークのサリバン・ストリート。
とても気持ちの良い午後のことでした。

屋上や通りでは,子どもたちが遊んでいます。
あちこちで第二次世界大戦の帰還兵を祝う飾りがゆれていました





みな楽しそうでしたが、
一人だけ、浮かない気分の男の子がいました。
アンソニーです。

彼は、家の中で壊れたたこを直していました




その時です。
通りの向こうから、

かすかににぎやかな音楽が聞こえてきました。


てまわしオルガン?
パレード?


いいえ!
白と黒のまだらの馬に引かれて
移動式のメリーゴーランドがやってきたのです!










子どもたちも大人もみな大喜びで、通りに集まってきました。
お小遣いを持った子は、次々とメリーゴーランドに乗り込んでいきます。

でも、お小遣いのないアンソニーは、
一人だけメリーゴーランドに乗ることが出来ません。

たった一人、そばから皆を見ているアンソニー。

メリーゴーランドの持ち主コレッリさんは、そんなアンソニーの姿に気が付いていました。







アンソニーはコレッリさんの粋な計らいで、
メリーゴーランドに乗ることができました。
メリーゴーランドが止まったとき、
彼は一目散でコレッリさんのところへ駆けよりました。



「ありがとうございます!
こんなに たのしかったの、ぼく はじめてです!」

そう言うアンンソニーに、
コレッリさんは、まるで大人にする様な、しっかりとした握手をしてくれました…。





東京子ども図書館から刊行されている
『庭園の中の三人 左と右』
(マーシャ・ブラウン:著 松岡享子/高鷲志子:訳)

の中で、
マーシャブラウンが次のように語っています。

「私は、自分が村で育ったことを幸運だと思っています。
村では、近所に住む人は、おとなも子どももよく知っていました。
おとなと子どもが深い友情で結ばれることもまれではありませんでした。
(中略)
子どもの人に対する反応は、親がどんなにコントロールしようと思っても
できるものではありません。子どもたちは、ふつう自分が感じていることを人に
話すことなしに、ひそかに人に対する反応を探っているものなのです」


アンソニーは、コレッリさんが自分のために何をしてくれたのかを、
ちゃんとわかっています。
そして、
その好意に対する感謝の気持ちを、どう表現したらよいのかも。


メリーゴーランドが止まった時、
一目散にコレッリさんの元へ駆けつけるアンソニー。

絵本を見ていると、その姿が目に浮かぶようです。
アンソニーの嬉しい気持ちが伝わってきます。



アンソニーが、コレッリさんにきちんとした挨拶をした時、
コレッリさんは、まるで大人にするような握手をしてくれました。
コレッリさんも又、アンソニーが自分の好意をどんなに嬉しく思っているか、
ちゃんと分かったのですね。
二人の間に、
まさに友情が生まれた瞬間でしょうか。


今からほぼ70年近い昔、この本は刊行されました。
ここからマーシャ・ブラウンの作家人生が始まったのでした。

マーシャ・ブラウンはその後、女性作家でただ一人、
生涯で3度のコルデコット賞を受賞するなど、
素晴らしい作品を世に出し続けてきましたが、
今年2015年4月28日に96歳で亡くなられました。

1月にマーシャ自身の手による「この作品について」という小文をいただいておりました。
(本文の最後に彼女のサインとともに掲載してあります)
そこには1月3日の日付が書かれていました。

もしかしたら、この文を書かれたのがマーシャの最後のお仕事だったかもしれません。
そう思うと、何かとても大きなものを頂いたような気がします。

原書初版の色、風合いをできるだけ忠実に再現するべく数回の試行を繰り返し、
刊行に至りました。
マーシャ・ブラウンという偉大な絵本作家のデビュー作品。
若々しい感性が、とてもまぶしいです。

既に書店さんの店頭には並んでいる頃。

お手に取っていただければ幸いです。




 
zuiunsya * 新刊情報 * 15:20 * comments(0) * trackbacks(0) * pookmark

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